2016年3月24日木曜日

BRM320埼玉300km アタック愛鷹は DNF でした。 (2) DNF から家に帰るまで


 はいどうも、敗残兵ですよどうもどうも。

 前回は準備から PC2 直前まで。補給はうまくいってないわ暑いわ寒いわ雨に降ったり降られたりだわ登るわ下るわさあ大変、という状況の中、何とか 159.0km 地点であるところの PC2 へ到着できそうです。相変わらずのどしゃ降りの中、漬物さんチームはどこまで足掻けるのでしょうか。それでは行ってみましょう。

帰ろう…スタート地点に、豊水橋に!




 PC2 到着はクローズの一時間前。この状況下でも 10 分ずつ貯金がたまってはいるのはありがたい。正直、調子は悪い。160km 走ってきて口にしたものは飴6個と総菜パン一つ、焼きそばパン、プリン、コーヒー、コーヒー、親子丼、コーヒーのみである。明らかにカロリーがとれていない。宮城 600 での食道痛が軽いトラウマになっており、補給せずに済むならばと補給をしなかった結果である。朝から続いている謎の―謎ではなく、前日の、夕食タイミングミス―消化不良もいまだに解消できていない。無理してでも何か食べなきゃと思うものの、食指が全く動かない。




 埼玉スタッフの皆さんや、雨宿りしているランドヌール・ランドヌーズと会話を交わしながら防寒対策に勤しむ。靴下の上からビニール袋をかぶせて靴を履いたり、高級ゴム手袋のテムレスを購入したり、粒コーンスープを買って牛よろしく反芻したり。

 あまりのどしゃ降りにさてどうするか…とうだうだしてはいたものの、スタッフの Y さんから「雨雲レーダーによるとそろそろ雨はやむはず」との情報を得る。時間的にも厳しいし、行くしかない。いずれにせよ、少しでも希望がある状態で出発できるというのは幸せなことであるなと思うことにし、PC2 を辞去。寒い寒いとはいえ、まだ耐えられる。勝負はこれから、日が陰ってからである。

 次の PC は 75km 先ではあるが、41km 先のコンビニを休憩ポイントとしている。これから登り基調とはいえ、道志みち、愛鷹山に比べれば屁でもない。それに、少なくとも登ってる間は寒くないはずだ。雨粒にまみれて我が意気は盛んなり。


 が。
 出力が上がらない。

 当たり前だ。結局 PC2 では粒コーンスープとホットミルクティしか飲んでいない。補給不足が原因であることはわかっていつつも、食欲がわかない。あんなに気を付けてきたつもりなのに、たった 185km で、既に食道が痛い。逆流性食道炎の非道い奴である。流石に宮城 600 ほどの痛みはないし、太田胃散ですぐに痛みが散るレベルではあるが―軽くショックではある。

 御殿場からの下りですっかり体温は奪われてしまった。ちらりと見えたコインランドリーに飛び込もうかと思うものの、少しでも先に行かないとという謎の使命感からスルー。結果、歯の根をガチガチと言わせながらも休憩ポイント(200km 地点)にはきちんと着くことができた。意を決して着替えを行おうとするも、長袖インナーの1/3が濡れてしまっている。ダイナパックにすら浸水するほどの雨量だとは…うかつだった。

 それでも今の格好よりはマシか、と着替えを敢行。小ざっぱりした上に、コンビニの暖房でだんだんと人間らしい行動ができるようにはなってきた。コーヒーを購入し飲んでいると、店員からあからさまに迷惑そうな顔をされる。話しかけられるわけではないが、近くに来ては様子をうかがいと言うのを2分おきくらいにやられたのではたまらないが、まあ、こちらは単なる不審者だし、これくらいの鼻つまみ者扱いでも仕方がないっちゃあ仕方がない。

 もうちょっときちんと水分を拭き取って着替えたかったな、とタオルを投げ捨てながら自転車に向かうものの、圧倒的な寒さに再始動ができない。さっきちらりと見たコインランドリーは 700m ほど戻ることにはなるが、あそこで復活をかけるしかない。ダンシングで無駄に体を動かして少しでも熱量を保持したまま登り返すことしばし、コインランドリーに到着。




 公共の福祉的にヤバくないところまで脱ぎ、乾燥機にぽいぽい放り込み、10  分ではおそらく乾かないだろうので 8 分乾燥を 2 回。トイレがあるのであればビブショーツも脱いで放り込みたかった。上手く動かない頭で残り時間を計算するまでもなく、貯金はゼロになるであろうことに気づく。さっきのコンビニによらずコインランドリーに直行していれば 20 分は余裕が残ったかもしれないが、そんなタラレバを考えたってすでに後の祭りである。貯金が無くなったって、15km/h で走ればいいってだけであって、それなら特に問題はない。ボクのブルベはここからがスタートなのだくらいの意識でいい。焦る必要なんて、ない。

 暖かく乾いた衣服に袖を通し、ようやく人心地を取り戻す。あと 100km 。下り基調の後に細かいアップダウンはあるものの、本当に怖いのは信号峠くらいのイージーコース。30km 先のPC3 へいざ行かん。

 せっかくの下り基調だというのに、渋滞のピークにつかまる。幸い雨は上がりつつあるのに、これじゃあどうしようもない。補給を入れてないから当たり前であるが、エンジン出力も相変わらず上がらない。逆流してくる熱い胃液を少量の水で押し戻す戦いを繰り広げながらえっちらおっちらペダルを回す。メーターが全然進まない。そして、痛い。竿の上というか、臍の下と言うか、僕の息子の頭髪にあたる部分が下腹の皮膚をがりがり削ってくれてやがる。濡れたままのビブショーツがついに牙をむいてきたってわけだ。なんたる。荒ぶる俺のギャランドゥとか言って笑っている場合じゃない。

 そんなこともあって、さすがにこれは間に合わないだろうというネガティブな気持ちでいっぱいになる。ペダルの踏込を弱めれば、立ち止まれば、合法的に DNF ができる。普通にタイムアウトを偽装できる。えへへ間に合いませんでしたーで済む話だ。輪行でワープしてもいいしスーパー銭湯で再起を図ってもいい。いずれにせよ、クローズ時間よりも前に、生きて豊水橋には帰れるんじゃなかろうか。

 とはいえ。

 DNF にお金を使うって本当に無駄なんだよな…という思いもあるし、やればできるのに余力を残してタイムアウト気取る(気取る?)なんて最高にかっこ悪い。よれよれでぼろぼろでどうしようもなくてってんならわかるけど。でもなあ、ゴールについてからまた 400km のドライブだしなあ。

 いやでも。

 と、否定に否定を重ねて脳内をぐるぐるさせながら何とかクローズ 5 分前に PC3 に滑り込めた。スタッフの皆さんも待っててくれた。味噌汁を食べ、ライトの電池を交換し、ウィダーインゼリーを流し込んでリスタート。ここで貯金はゼロどころかマイナスになった。残り 68.7km。23km/h で走れば 3  時間でゴールだ。

 右ひざの違和感が痛みになってはいるものの、これは走りながら治せるパターン。右腕に違和感があるけどこれもまだまだ騙せる。コンディション上の大きな問題は、補給が補給になってくれない胃腸と、陰毛と、ネガティブに傾いてきた精神である。


 いずれにせよ、行けるところまで行くしかないのよね。溜息をつきながらペダルを回す。お腹が減ってるのに食べれない。けどまあ、もう寒くもないし。何とかなんだろ。

 徐々に下がっていく平均時速を見ながらため息をつく。渋滞と信号さえなければ訳ないのに。

 平均時速が 15km/h を割った。総平均時速は確かにそうかもしれない。でも、PC3 からの平均時速ならまだ割ってはいないはずだ。あとすこしだけがんばればいい。

 進まないメーターにいら依頼しながら、休憩予定の 264km 地点のコンビニをやり過ごす。その次に現れた坂でとうとう立ち止まる。どう計算しても間に合わないよ。クローズまで 1 時間 30 分で残りは 30km 。この微妙なアップダウンに加えて、信号峠が立ちはだかるコースに対して時速 20km/h を維持しなければいけない。流石に、それは、無理だ。

 自転車から降りて財布からブルベカードを取り出す。カードを濡らしているのは、暫く前からまた降り始めた雨のせい。いや、顔から滴る汗のせい。いやもしかしたら、頬を伝う涙のせいかもしれない。開かれたブルベカードの右隅にかかれた番号が滲む。スマートフォンの過剰な灯りが自分の顔を照らして、すぐに消えた。


"遅くにすみません。出走番号 xxx の―"


 こうして、私のアタック愛鷹は幕を閉じたのであった。







 とはいえ、ブルベは家に帰るまでがブルベである。何とかしてゴールについて車を回収しないことにはどうしようもない。1 時間オーバーくらいなら何とかゴールに着けそうだし、こんなずぶ濡れでも乗せてくれるタクシーがいたらラッキーなのだけど。

 現金なもので、DNF 宣言して気が楽になったのか、25km/h くらいでの巡航速度。ただし、予想通り信号でどうしても時間は取られてしまって、平均速度としては 16km/h 前後。DNF の判断は間違ってなかったようだ。だらだらとペダルを回し…277.92km 地点、時間にして 19:38:47 でサドルの上から下りることになった。


 ありがたい紆余曲折があってスタートの豊水橋に無事戻ってくることができた。恒例のあの熱くて美味しい味噌汁をいただいた。身体に染み渡る塩分と栄養に酔っぱらったようになりながら撤収準備。仙台から持ってきた MTB を受け渡しして埼玉におけるミッションはすべてコンプリート。とりあえずこれでひと段落だ。

 諸々お礼を言って、聖地豊水橋を後にする。とにもかくにもお風呂入りたいのだが、目指すスーパー銭湯は 38km 先。ラブホテルも数軒見てみたものの、3 連休の真ん中だし、当然のように満員御礼。回らない頭で運転し、道に迷いながら 2 時間。ようやく暖かいお湯に飛び込むことができたわけである。ハッテン場とかだったらどうしようと思っていたのはここだけの秘密。

 私服に着替えて、2 時間ほど仮眠するとようやく、日常に帰ってきた感じ。眠い目をこすりながらまずは栄養補給にと牛丼屋へ直行、並盛と、味噌汁とサラダのセットをチョイスした。ブルベ腹とかダイエットとか言ってる場合ではないので、サラダには胡麻ドレッシング。いただきます、と口に運ぶと妙に辛い。胡麻ドレッシングって辛子の類は入ってないと思ったんだけど…ってこれ、口の中の粘膜がヤられてるからだ。情けないったらないなあ。

 東北道へはすぐアクセスできる位置にいたのでさっさと高速に乗る。くちくなった腹が眠気を誘うものの、激的に眠いわけではない。それでもふらふらと SA や PA によりながら、通常なら 4 時間半のところを 7 時間くらいかけて自宅へ戻った。

 お風呂に入って、ばたんきゅう…したかったのだけど、不思議とさほど眠くなく。汚れ物を前洗いしてから洗濯機に放り込み、ダイナパックと靴を乾かし、用品を片付けてようやくベッドへ。両サイドに猫が貼りつき、川というより小の字になって夢の世界へとやっと旅立つことができた。


 こうして、私の遠征ブルベは円満に終わってしまった。また埼玉ブルベ、出てみたいな。


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 というわけで、300km の認定を逃してしまった漬物さん。参加可能なブルベは 600 と 400 しか残ってはいない。400 を2回走るとか想像するだけでゲンナリしてしまうものの、SR を狙うためには致し方ない。次回、漬物ブルベ道は「BRM618 宮城400 阿賀野です!」

 お楽しみに!(なんだこのノリ)


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