2014年5月31日土曜日

グランフォンド飯豊に行ってきます



 はいどうも、こんにちは、漬物さんですよ。どうもどうも。


明日から6月。やー、月日のたつのは早いもんです。

 毎年6月はイベントラッシュなのですよ。今年は…

06月01日(日): グランフォンド飯豊
06月08日(日): さくらんぼマラソン
06月14日(土): BRM621宮城400試走
06月21日(土): BRM621宮城400スタッフ
06月29日(日): ツール・ド・さくらんぼ

 やあ、死んじゃいそうだわね。平日にいかに体力を温存かつ維持できるかがポイントですねえ。

 で、グランフォンド飯豊。走行距離 164km、獲得標高2619m。これを10時間で走れ、と。信号もコンビニもほとんどないし、グロスで 16.4km/h なら何とかなるでしょとお思いのあなた。前半 61km 地点の足切ポイントに3時間で到達しないといけないのよ?大丈夫かな本当にorz

 いずれにせよ、私のような方向音痴かつ地図読みができない人にとってはまずは間違いのないルートを安心して走れることが必要です。そんな同志たちのために、公式から引っ張ってきたデータと勝手に作ったウェイポイント、峠情報をまとめておきました。必要な方はダウンロードして使ってください。ガーミン系ならぶち込むだけで使えると思います。


 なお、データはあくまでも個人が作ったものですので、正しいとは限りません(私自身は正しいはず、と思ってますが)。保証はないのでそのあたりご理解の上、お使いください。






ダウンロード granfondo_Iide.ZIP (48.9K)



2014年5月26日月曜日

楽園はすぐ近くに。宮城県の猫島こと、田代島へ行ってきました

 はいどうも、つけものさんだにゃー。



 いやもうね、なんというか…牙を抜かれた社会人ってのはこんな感じになるのですよ。青い空、広い海、朝ビールに昼ビール、大量の猫たちとさわやかな風。すべてが与えられた状態で4時間もまったりしてごらんなさい。他人へ攻撃する気持ちや批判する気持ちなんてなーんも無くなりますから。



 というわけで、宮城県の猫島こと、田代島へ行ってきました。細かな説明はおそらくいらないでしょうが、猫とダメな大人たちのギャラリーってことで一つ。

 


 朝0600時に待ち合わせ。三々五々お互いを見つけてじゃあじゃあじゃあと座席を確保。今日は自転車も車も使わない。公共交通機関のみでの旅ですよ。

 つまり、

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これを

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こうしちゃうわけです(確か朝0605分ごろ)。

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宴会は進むよどこまでも…とはいかず、小牛田で乗換。期せずしてマンガッタン。大きいお友達は「わーい、痛車だ痛車だ」と喜び勇んで記念撮影。

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 部活に行くのであろう健康優良児たちに交じって、「朝酒キクっすねww」とダメな大人たちが電車に揺られてついた先は、漫画の町石巻。

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 補給おk。タクシーで港へ向かいます。漕がなくても進むって最高やね。

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 うーみよーおれのうーみよー♪

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 陸地の近くはグリーン基調。沖に出れば出るほど…

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 いえす、ブルー。あっという間に見えてきたのが田代島。そう、猫の楽園です。

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 この青と緑だけで十分に癒されるわけですが、ボクらの目的はそこじゃありません。

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 あんたたちよく来たねよく来たね!と言わんばかりに猫様がかけよってくるわけで。

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 フィーッシュ!いや、キャーット!もうね、辻辻にいるもんだから目的地にまーったくつかないでやんの。猫がいれば立ち止まって大撮影大会&猫じゃらし大会。人里にいる猫とはいえ、かなりたくましい生きざまをしている猫たちのようで、体に障らせてくれるのはごく一部。とはいえ、かわいいケモノが目の前でうにゃうにゃしてるわけですよ。タマラン。

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 いやだがしかし、我々はよそ者であり、ご挨拶をしっかりしなければならないのであって。猫神社へお参りに向かいます。てくてくと歩いていくとよくきたねよくきたねー!と向かいから走ってくるケモノ達が…

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 あああ、かわええ。全然進めねえwww

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 猫じゃらしを出そうと思ってかさかさとビニール袋の音をさせると「お?なんかくれるのかい?」と猫に包囲される奥様。

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 エサは食べ過ぎるとアレなのでほんの少しだけ。しかしお前らどこから出てきた?

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 大分近親繁殖はしてるのでしょうが、毛足の長いおしゃれな子も。紐がセクシー。よーし俺も猫じゃらしるぜ。以下、FPSの画面だと思ってお楽しみください。

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 この後キシャーとされました。すみません調子に乗りましたorz 積極的なプレイがアレならば、と自動猫釣りシステムが開発され―

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 ターゲットロックオン。

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釣れた釣れたw

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 数々の誘惑を振り切ってようやくたどり着いたのがこちら猫神社。猫のオブジェや、平たい石に猫を描いたものが奉納されています。このお社の近くには縁起というか、何故猫が大事にされているのか、何ゆえ猫神社が出来上がったのかという心温まる話が書いてあります。ちなみに祭日にはマグロが奉納されるとのこと。う、うらやましい。

 ご挨拶も済ませたし…どこ行こう。マンガアイランドという施設があるらしいのでそこへ向かうべえとビールを担いだまま山歩き。日差しはなかなかのものだけど風がさわやか。ちょっと汗ばむくらいとビールを飲むにはうってつけ。

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 猫肉球スタンプ。

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 寄合所。

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 ご主人が帰還するとあっという間に猫たちが出てきてお出迎え。凄い光景でした。うらやましい!

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 何となくトレインを組んでしまうのはなぜなのか。先頭交代とかしなくていいんですけどねえ。てくてくと2kmも歩いてないくらいで現れたのがマンガアイランド。そしてこのオーシャンビュー!

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 タマりませんなあ。

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 では。

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 プロージット!

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 ご相伴にあずかりに来ますた!と猫たちがわっさわっさ寄ってきます。ちょうど昼時で、田にも3テーブルほど昼食をとっていましたね。猫たちがローテーションしながら人間から餌をいただきに来るわけです。といっても、食べさせすぎるといろいろと良くないでしょうから、基本、あまりあげずに。盗られてしまったモノはしょうがないのでそのまんま。「こ、この泥棒猫!」というセリフで盛り上がる盛り上がる。

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 青い空、白い雲。ちょうど良い日差しとさわやかな風。緑と猫。そして仲間とビール。もうなんもいらねえ…と、調子よく缶が空いていくわけですが、そろそろやめとかないと港まで帰れなさそう。じゃあじゃあ続きは港で・・ってことで移動開始。

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 見てよこの水の透明度。底までみえるんだぜー。岸壁にはウニがビッシリ。うはー、漁業権を今すぐ俺にクレ!などと馬鹿言いながらマッタリしていると

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 やーやーどうもどうもと猫たちが。幸せだねえ…。

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 悪い子いねがーと迫力のボス猫さんも現れたり。いや本当、猫づくし。



 思うさま猫と遊んで、飲んで…

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(著者近影)


 14:21の船に乗ったのは覚えてるんです。港で降りて、タクシー乗って石巻行って、途中どこかで乗り換えて、また爆睡して… 17:57 に仙台駅着。ふむ、楽園まで3時間半ってところ。仙台市民の皆さんよ、3時間半で楽園に行けるんですよ。行かない手はないですって。日頃のストレスなんぞこの島にいけばあっという間に粉みじん。いやあ本当にいい経験でした。

 企画・プロデュースしてくれたイワンさんに感謝!まれにみるいい旅でした。ちなみに、日曜日には抜け殻になっておりました。牙もトゲも抜け落ちちゃった。また行こうと思います。皆さんもぜひ!

# 下調べだけはしていったほうがいいですよ。補給所はありませんし、トイレも限られています。


2014年5月20日火曜日

BRM517 宮城 300km 最上川 顛末記

 はいどうもこんにちは、漬物でーす。誰にかまれたわけでもないのですが、小指のしびれが取れませんねえハッハッハ。



 悪天候に苛まれたBRM517 宮城 300km 最上川。今回は一人で参加となりました。やー、本当に、いろいろな意味でキツかった。



「なんでこんなことやってるんだっけ」
「ブルベって楽しくないよね」
「実力が足りないってことだよな」



などなど、頭の中には常にネガティブなセリフでいっぱい。それでも楽しめたのは、「ネガティブなことを言うと辛さが1/3になる」と某お医者様に教えられたため。ネガティブを肯定しちゃえば楽しく走れるということがよーくわかりました。



 さて、今回はレインウェアの中に入れた iPhone が浸水するほどの雨ザーザーだったので画像はほとんどありませんが、顛末記なぞ書いてみたいと思います。

 

 天気予報をじっと見つめても、予報が変わることはもちろんない。試走スタッフのレポートに何回目を通しても、結果は同じ。あーもう、また寒いブルベかよ、とひとりごちながらもそもそと装備を変更する。

 Cannondale のモーフィスジャケットは置いていき、最初から dhb のシグナルレインジャケットを着用。空いたサドルバックのスペースにはサイクリスト御用達、おたふくインナーの長袖と速乾性の長袖のTシャツを入れておく。夜、濡れた身体で山刀伐峠を超えるのは、寒さに弱い自分にとっては自殺行為にも等しい。急場しのぎではあるけれど、100円ショップで手に入れたレインウェア下と替えの靴下、ネックウォーマーも追加。これを持っていけと奥さんが手渡してくれたホッカイロもありがたくもらっておく。


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 当日は朝3時に起床。仙台は晴れ。ただし、風は強い。今回は奥さんがスタッフカーとして各地の PC をまわるため、簡単な工具、チェーンオイル、空気入れも積み意気揚々とスタート。サンドイッチをほおばりながら寒河江を目指す。風の強さに驚きながら運転をすることしばし、たまに雨が打ち付けてくる。今日のブルベは荒れるだろうなあ。


 寒河江に到着。すでにスタッフと参加者が到着しており、それぞれ準備や作業を始めている。奥さんにスタッフ業務を任せ、自転車を組み立て、試走。そういえば、ステムを長くしてから 6km 位しか走ってない。少し股間に違和感はあるものの問題はなかろう。


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 と、駐車場で試走しているとこんなバイクが目に入って驚愕。そう、宮城 1000 でもママチャリ参加で周囲を驚かせたあの人がまたやってくれた。お値段は 70 万円ほどだそう。これで 300km 走るのか…まねできないなあ。


 ブリーフィングが始まった。


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 本日の天候にもめげずに出走したのは48名。車検後、順次スタート。車検をしながら他の方の装備を見ることができるのはスタッフの特権だろう。自分のバイクを奥さんに検査してもらう。問題なし。


 「では、行ってきます。本日はよろしくお願いします!」と、意気揚々とスタート。今回こだわったポイントは二つ。


 一つは、補給食。今まではその時食べたいものを遠慮なく食べるという方式だったが、だいたい胸やけを起こしてスピードダウンしていた。ところが、パン類のみを食べた時は胸焼けしない。よって、今回の補給食はすべてパンにする。


 もう一つは、コンビニで休憩しすぎないこと。尿意や便意については仕方がないとはいえ、疲れたから休憩しようと目に見えるコンビニに飛び込むことはしない。だいたい 30km 毎に休むためのコンビニエンスストアを事前に調査しておき、iPhone の裏に退出予定時間とともに貼り付けておいた。


 汗をかくでも息が上がるわけでもないちょうど良い速度を維持すること 40 分ほど平均時速は 23km/h 程度。150km 位までは大体 20km/h で回りたいという計画だったため、非常に快調。雨粒はまだないが、路面はかなりウェット。


 と、後輪に違和感。すわパンクか、と後輪を指で握ってみるも空気は抜けていないよう。とはいえ、タイヤが凸凹したような感覚があるんだよな。いや気のせいだ、路面が荒れてるからだろうと自分を納得させて再スタートし、坂を越えようと踏み込んだ瞬間、リムがタイヤを踏む「ぐにゅ」っとした間隔が伝わりあわててストップ。タイヤをチェックする。


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 目が点になる。なんだこれ。


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 螺子…?綺麗に踏んでしまったがゆえに空気がすぐには抜けなかったらしい。リムテープにまでダメージを与える長さには飽きれるのを通り越して笑ってしまった。


 問題はタイヤだ。これだけの大きな穴となると、チューブがにゅっと顔を出すことになってしまい、再度のパンクは必至だ。…が、こんなこともあろうかと、一応持ち歩いているレザインのスマートキットにはタイヤブートが入っている。これを貼って事なきを得た。準備って本当に大事だと実感した瞬間でもある。


 CO2インフレータもあるが、携帯ポンプで空気を入れる。5気圧程度は入っただろう。二の腕の筋肉が悲鳴を上げた。グロスは 18km/h まで落ちている。焦れる。が、強烈な尿意も収まらない。すぐ上の民家の方がいらっしゃったのでトイレを…とお願いすると「雨降ってるからそこでいいよー。かまわないからー。」とのこと。家というか倉庫というか、の所有者の方の前で粗末なものを取出し放尿する羽目に。おそらく、何人かにこの姿は目撃された気がするが、気にもしていられない。先を急ぐ。


 PC1 に到着。スタッフの方たちと「パンク大丈夫だった?」と盛り上がる。他の参加者の方向けに…と用意していた空気入れをまさか自分で使う羽目になるとは思わなかったが、後輪の空気も回復した。サンドイッチと乳酸菌飲料を飲んで急ぐ急ぐ。前半で足を使いたくはないが、仕方がない。


 向かい風は相変わらずだが、雨が、降ってきた。
 いそいそと100円ショップの頼りないレインウェア下をはき、先を急ぐ。雨はどんどんひどくなり、アイウェアが水滴でびしょびしょ、前が見えない状態にまでなった。かといって、裸眼で走るわけにもいかない。手で拭いながら黙々と進む。寒い。


 目当てにしていたコンビニに飛び込み、ゴム手袋をゲット。体温を奪われないために、靴下の上からビニール袋を着用する。日本の誇るサバイバルのエキスパートから直伝された技だ。確かそのあとはごみ袋を着用する手はずになっていたが、大丈夫、まだそこまでではない。


 時折、サポートカーである奥さんの車から「…ってー!」という声が聞こえる。おそらくがんばってーと言ってくれているのだろうが、雨音と車が跳ね上げる水の音で聞こえない。聞こえないが、応援されているのはわかる。これは嬉しい。脚もまわる。


 前半の PC は基本的に折り返しポイントがある。参加者たちと手を振りあい、お互いの健闘を称え、また、祈る。中には明らかに震えてる人、目が死んでいる人たちもいたが、それでもクランクの回転は衰えない。衰えたら最後、寒さで動けなくなるから。


 PC2 へ到着するころには全身ずぶ濡れ。私のレインウェアは確実に雨をはじいてくれるが、体内の熱と湿気を放出することはできない。いくらベンチレーションを開けたところで、ほとんど効果がないし、熱気を一緒の放出するわけにもいかない。結果、雨と自分の汗でしとどに濡れる羽目になる。反射ベストを着た濡鼠、である。


 そんな参加者たちを見て、PC2 ファミリーマート藤島店の店長さんとオーナーさんが仮設のベンチを用意してくださり、久々に椅子に座ることができた。消費期限が切れてるけれど暖かくはなるからとホッカイロの差し入れまで。これに助けられた参加者のなんと多いことか。


 ここでまたメカトラブル。ライトホルダーとして使っているミノウラのスペースマウントの根元が緩んだのかカチャカチャとうるさい。手持ちの工具では増し締めできない部位でもあるし、これ以上緩むことはないだろうとは思うのだが、仮に脱落してしまったら山刀伐峠は絶対に超えられない。よもやと思って入れておいたタイラップで補強。必要ないだろうと思って持ってこなかったらアウトだっただろう。備えあれば憂いなし。


 PC3 は宮城 1000 で池になっていたコンビニである。今回は幸いなことに水たまりレベルではあったものの、ランドヌール達が一様にため息をつきながら溜まりこんでいる。寒い。とにかく寒い。「これで…半分か」と誰かが呟いた言葉に一同うなだれる。


 近くに道の駅があり、まともな食事をとれることも知っているし、おそらくこの気温なら暖房も入っているだろうという予想はできる。いっそここで…と思いたくても、ここから寒河江までどうやって帰れというのだ。走るしかない。走るしか。


 なかなか上がらない尻をえいやっと持ち上げ、向かい風の中を青沢越。天城越えを歌いあげながら登る。このコース、山刀伐峠がクローズアップされがちだが一番きついのはこの峠である。えっちらおっちらつづら折れを登り、山を越えると、今度は左側から容赦なく、車道の中央まで持っていかれるくらいの雨風が吹き付ける。そしてルートは、この風に向かって真っすぐ走れという指示になっている。神よ…。


 おじぎ乗り、という乗り方がある。やまめ乗りという呼称のほうがメジャーではあるが、正式名称は「おじぎ」乗り。背中を丸めずまっすぐにし、ハンドルを低く遠くにして、「軸」を利用してクランクを回す乗り方なのだが、向かい風には非常に都合が良い。がむしゃらに漕がずとも、体重を移動するだけで前へ進んでくれるし、何より前面の空気抵抗が少ない。雨粒が顔にあたって痛いものの、心折れて地に足をついてしまうことはない。状況的にも体力的にもキツいけれど、これがあったから何とか乗り越えることができた。


 が。


 尻が痛い。2km 走ってはダンシング。…んんんん、もう我慢ならん。なぜ今回はこんなに痛いのか。汗や雨でシャモアクリームが流れたのか、と追加投入をしても変わらない。


 あまりやりたくはないが、サドルの高さを変えることにする。これはサドルが低すぎるのではないかとすこし高く調整。当たり前だが、さらに股間が圧迫されて痛い。そこでようやく思い出す。そうだ、ステムを長くしているのにサドルの角度を変えていない、ということに。


 Dynapack を外し、アタッチメントを緩め、サドルの角度をちょっと下げる。そんなことやってる間に何人かのランドヌールに抜かれながら何とかフィッティング。よしよし、これなら耐えられる。ここでも時間を20分ほどロス。準備は、本当に、大事だ。


 さて、次のコンビニへ。だいたい 30km ごとなので心が折れずに済むというのはとてもいいことである。…あれ?ない。ないぞ?その「コンビニ」がない。しばし呆然としつつ、首を振り振りあきらめる。PCまではたったの 20km 弱だ。カバンの中にはご褒美のホットケーキだって入ってる。大丈夫。

 寒い。雨は結局やまない。予報では確か正午くらいまで雨だったのは記憶しているんだが。神社仏閣その他史跡を見つけるたびに、雨をやませたまえ、ランドヌールを無事通過させたまえと念じるくらいの精神状態。ふと「ほう。お主は無事通過しなくてもよいのじゃな?」という声が聞こえた気がするが、それはきっと気のせい。

 PC4 到達の 5km 手前でたまらずセブンイレブンへ入る。ありがたい、暖房がきいている。チリトマトヌードルを購入し、お湯を入れる。湯気っていいよな。ぶるぶる震えながらふとポットに目をやると、設定温度は 90℃。まさか、と思って二度見。お湯の温度が低いと、いわゆるスナックめんのようなカップヌードルが出来上がるのであるが、パンしか食べていない自分にとって、暖かい湯気が上がるものが手元にあるというのは大変ありがたいこと。胸焼けが来るだろうなと苦笑をしながらもずるずるとすする。暖かい。頬を伝うのは雨なのか涙なのか、と天を見上げて気が付いた。空からの水が、やんでいる!

 PC4 はほぼ 200km 地点。ようやく到達したのはスタートから11時間後。気象条件、トラブルの頻度を考えると個人的にはかなりの速さで進んでいる。寒いだけで、体力は問題ない。関節の痛みもない。手や腕のしびれも皆無。つまり、調子は悪くないどころか、良い。あと 100km。時速 15km/h でも 7 時間で到着できる。ここから先はだらだら登って山刀伐峠を超える山岳コースを越えれば 20km くらいの下り、そして細かなアップダウンはあるけど概ね平地。完走はできる。できるはずだ。

 おもむろにヘルメットを外し、ネックウォーマーをトップチューブにかけ、レインウェアを脱ぐ。アイウェアをヘルメットの中に放り込み、水分でまとわりつくレーシャツを脱ぎ捨てる。冷気が容赦なく身体に突き刺さるが、気にせずビブショーツの肩紐を一本一本外していき、ちらっと後を見ながら「あンたも好きねェ」と呟く…なんてことはせずに黙々とインナーを脱ぎ、もってきたおたふくインナーを着る。暖かい。念のためにと速乾性の長袖Tシャツも着こみ、
装備を固める。乾いた服ってこんなに快適なのか、と感動しながら出発。次の休憩地点まで約 30km。

 だらだらと登り続けていると、暑い。せっかく乾いた衣服を着ているのにまた濡らしてしまっては意味がない、とベンチレーションを全開にし、前をはだけて登る。寒い寒いと言っていた数時間前がうそのようだ。しまいには長袖 T シャツを脱いだ。CBN を中心におたふくインナー信者が多数いるのはうなずける。濡れはするが、すぐ乾く。乾くときに気化熱を持っていくわけではなく、暖かいままに乾いていく。これは素晴らしい。

 PC5 の20kmほど手前で休止。切株で作ったベンチでコーヒーを飲みながらパンを頬張る。ジャムパンはマーガリン入りのほうがおいしい。カフェイン断ちをしていた体に流し込まれる珈琲はなかなかに強力で、妙なテンションの上がり方。頭の中に流れる音楽は、HIPS

「夜をぶっとばせ」。鼻歌を歌いながらメインライトである中華ライトと GENTOS に火を入れる。道路を2~3人のランドヌールが走って行く。さあ行こうか、同胞たちよ。Let's spend the night together, now. スリルな、もっと、夜を。

 PC5 に到着。抜きつ抜かれつしてきたランドヌール宮城のスタッフたちと合流するも、サポートカーは来ない。「スタッフカーは?」と聞かれるも、iPhone に電源を入れるのがためらわれる状況では確認のしようがない。脱いでいた長袖 T シャツを着こみ、雨ですっかり流れてしまったチェーンオイルを補充。さあ、山刀伐峠にアタックだ。

 結論から言うと、山刀伐峠は特になんということも無かった。淡々と登ったらトンネルが見え、そこを超えると幽霊で有名な公衆電話ボックスが見えた、というだけである。一応「山刀伐峠をぶった切り☆ミ」と快哉を叫んだものの、その声は山のなかに消えていくだけ。長い下りが始まる。

 ペースは申し分ない。体力も体の調子も問題がない。しいて言えば、両膝の裏側に多少の違和感があるくらいだ。初期にメカトラブルはあったが、怖いくらいに順調。好事魔多し。慎重に慎重に、と頭の中で何回も言っていたことなのにどこに油断があったのか。255km 地点で前輪にガツっと衝撃が走り、プシュシューと激しく空気が抜ける。パンクだ…ここまで来てパンク!?なんなんだよ!と怒ったところで始まらない。前回と違ってタイヤには異常なし。チューブを見てもいまいち原因がわからない。焦らずじっくり丁寧に見ていくこと5分でスネークバイトを確認。良かった、何かが刺さっていたわけではないのだな。
 ここでも何人かにパスされ、チューブ交換。時間がないわけではないが、また携帯ポンプで腕がだるくなるのは嫌だ。CO2インフレーターでパシュッと空気を入れ、チューブのバルブを閉…まらない?当然ながら先端を押せば空気が抜ける。歯を使って何とかしようとしても、この手組のホイールのスポークに入るほど小顔ではない。ペンチのような工具はない。下手に触って空気が抜けたらアウトだ。ええいままよ、とバルブキャップをかぶせると、特に空気が抜けるわけでもない。もうこれで行くしかない。ダメならレザインのパッチで修理をするしかないだろう、と暗澹たる気持ちで立ち上がり、また自転車にまたがる。ため息一つついて、また下りはじめる。

 最後の PC で確か、速攻元気的な流動食を食べた。固形物は胸焼けの可能性があったから避けたのだが、この流動食も私には合わなかった。漕げば漕ぐほどゲップが出る。水分が足りないのかと水を飲んでもマシになるわけでもなく、固形物は食べたくない。飴を舐めたら吐くだろう。

 コーラ。コーラが飲みたい。
 ゲップをしながら自販機を探すことしばし。自販機は見つけたがコーラのみ売り切れ。ふらふらと先に進むと見覚えのあるお店があり、自販機もコーラもあった。

 地べたに座りながら一気にコーラを流し込む。炭酸のせいか少しは胸焼けが収まった。誰もいないであろう店先でひときわ大きいゲップを出したところで胸焼け解消。よし行くか、というころにサポートカーが通りかかった。車でコース上を巡回するのもそれなりに疲れるのは宮城 1000 の時に経験済み。お互いの健闘を祈りながら残り 50km ほどを走る。

 もう平地だ。風もなく、雨もなく、車どおりも穏やか。何も考えずにペダルを漕げば宮城 300 認定、と。げーぷ。解消したと思った胸焼けが再発。胃腸薬を飲んで再スタート。

 胃腸薬に眠くなる成分が入っているとは寡聞にして聞いたことはない。ないのだが、ひどく眠くなり縁石に激突する寸前に足で蹴ってリカバー。ビンディングなら確実に落車してた。これはイカンと少し休む。疲れてるのかな?疲れてるだろうな、そりゃあ。

 平地は、飽きる。

 適度に山があってくれた方がどんなに楽か。などと考えながら自嘲する。山があれば平地がいいと言い、平地ばかりだと山が良いという。人間なんて勝手なものだ。PC1 だったコンビニにちょっとだけ寄ってトイレ休憩。なんとなく肺がおかしい。吸っても吸っても酸素が入って行かない感じ。あと 30km。前輪の空気はまだ大丈夫。


「なんでこんなことやってるんだっけ」

 ― 今年は SR とりたいしなあ。SR 持ってないスタッフってダメなんだっけ?


「ブルベって楽しくないよね」
 ― 不健康なスポーツ?だよなあ。辛いし苦しいし。楽しいところもたくさんあるけど。

「実力が足りないってことだよな」
 ― 足りないなー。心肺と関節と、えーとPMFストレッチとー


 などと自問自答を繰り返すこと何十回だったろうか。寒河江の商店街に入り、角を曲がり、セブンイレブンを越え、街のホットステーションが見えてくる。のろのろと自転車を置き、店内に入る。最後に何を買おうか悩みに悩んで、アサヒのドライゼロを購入。レシート時間は 23:32 分。17時間32分でのゴール。

 ちょうど他のランドヌールもいらっしゃったのでゴールをたたえあう。寒かったのだろう、味噌汁片手に笑顔を向けてくれた。私もおそらく、ニヤけていたのだろう。辛かったなあ、今回の300。じわじわ来るこの感じ、そう、これこそ ”It's Brevets!”

 ゴール受付は最上川ふるさと総合公園。そこまで約 1km はパレードランみたいなものだ。鼻歌交じりでだらだらとペダルを漕ぐ。BGM は確かゆずの栄光の掛け橋だった。そういえば、当日の朝、シャワーを浴びながら聞いてたんだっけ。熱いシャワー浴びたいなあ。いくつもの山を越えてゲットしたレシートがある。だからもう、迷わずに進めばいい。栄光のゴール受付へと。


 ゴール受付には見知った顔のランドヌール宮城のスタッフ。お帰りなさいと声をかけられ、開口一番出たセリフは「いやぁ、ひでぇ目に合いました」だった。それを見ながらもニコニコと声をかけてくれ、労わってくれる人たちがいてくれるから走り切れる。

 今回は本当に事前準備と、他のランドヌールとの触れ合いと、スタッフの笑顔と対応に助けられたブルベだった。一人で完走できたわけでは決してない。一人でも完走できる力が欲しいか…と言われれば、欲しい。けれど、欲しくない気もする。せっかくのブルベ。同じランドヌール達が走っている特別な日なんだから、いろいろな人から刺激をしたりされたりしながら、楽しく苦しく走っていきたいもんだ。




 着替え終わって―。


 軽く放心しながらゴール受付。私が後ろから8人目くらいだったらしい。それぞれの人たちがそれぞれの表情で入ってくる。自転車は一様に薄汚れ、浸水の影響で尾灯が明滅してるもの、どこで泥をかぶったんだというくらいに汚いバイク。それぞれのバイクが、それぞれのブルベを雄弁に物語っているような気すらする。ゴール受付は暇で、暇がゆえに大変な業務ではあるが、もしかしたら、一番楽しい業務なのかもしれない。最後のランドヌールを迎え、撤収。時間は0130時ごろ。こうして、BRM 517 宮城 300 最上川は終了した。参加者の皆さん、スタッフの皆さん、本当にお疲れ様でした。

 そして、この文章を読んでくれた皆さんで、ブルベ未経験の方にぜひ言いたい。


 来たれ老若男女。ブルベはこんなにも苦しく、辛く、楽しい。

2014年5月14日水曜日

BRM517 宮城 300km 最上川 準備編(1)

 はいどうも、漬物さんです。



 宮城 300 は初参戦となります。や、実は去年はいろいろあって DNS となってしまったので、実は初めての宮城 300 となります。ドキドキしますね。

 しかしこの時期の私というのは体調を崩しやすいんです。昨年は風邪引いたうえに急性中耳炎→慢性化というアレでしたし、今年はなぜか背中や肩、腰の筋肉がめちゃくちゃ痛くて頭痛を引き起こすというアレっぷり。3年前は元気に蔵王ヒルクライムに出れたのですが、確かそのあとも体調不良になっていた記憶があります。田植疲れなのか…。

 さて今回は実走スタッフという形です。アレなランドヌールをぴしぴし取り締まります、なんてことはなく、最後尾を走って何かトラブルがないかとかを見ながら走る役目です。そう、お役目で最後尾です(嘘。…なんて言ってますが、私の脚力だと心配しなくてもちゃんと最後尾にいることになると思います。ランタンルージュなジャージが欲しいと正直、思っておりますよ。

 基本的に装備に変更はありません…と言い続けて早1年。いつまでもスーパーアタック奥志賀の時の装備を見てくりゃれ、では芸もないので、下記していきましょう。



 


 

1) 自転車
 いつもの愛車 FOCUS Cayo2.0 を使います。前回の Fleche で、自転車を郵送するときにガッツリとディレイラーハンガーが曲がってしまいました。矯正はしたものの、ちょっと不安が残りますなあ。しかもスペアパーツが入手困難と来てる。なんちゃらの11番だの D320 だのいろいろな型番のモノを買いましたが、うちの子には合わねえんだよorz


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2) ペダル
 Shimano SAINT PD-MX80 を使います。安いフラペでの走行実績は Fleche でも平泉でもあるので大丈夫かとは思います。高けりゃいいってもんでもないでしょうけど、この子ならやってくれるはず。確実性をとるのであれば TIME の iClic を使うべき…なのかな?これもいつかは記事にしようと思ってますけど、ブルベやロングライドならフラットペダルがいい塩梅、と思うのです。


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3) サドルバッグ
 大容量の Topeak の DYNAPACK DX を使用します。アタック那珂川や Fleche、アタック平泉でも大活躍してくれました。アタッチメントの関係でサドルを若干高くせざるを得なかった問題は、サドルのアタッチメントをサンダーで削ることで解決。


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 ブルベには後述の三瀧山不動院ご謹製のカエルのお守りと、さりげなく宮城県人をアピールし、かつ、反射材にもなっているねこまさむね様を連れて行ってるわけですが…いつも取り付け場所に苦慮するんですよ。まさかここには収まらないだろうと冗談で入れてみたらぴったし。これで気兼ねなく走れます。行くぜねこまさむね!


 運搬重量は 2kg くらいが望ましいということでしたので、だいたいそれくらいのものを。



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  • レインウェア(上のみ)

  • パンク対策(チューブ2本、タイヤレバー、タイヤブート、CO2ボンベ2本)

  • 薬(眠くならない頭痛薬、甘草芍薬湯、胃腸薬、アルコール消毒紙)

  • タイラップ2本(ガムテープと絶縁テープを巻きつけてあります)

  • サロメチール

  • シャモアクリーム

  • iPhone 用バッテリー、ケーブル

  • 単3、単4、C2032 の電池

  • 工具(写真に写っているのは重かったので簡易的なものに変更)

  • ウェス、チェーンオイル

  • グローブ

 が入ります。

 補給食はバックポケットへ。内訳は

  • メイタン黒

  • 電解質パウダー

  • 塩サプリ

  • 2RUN

  • BCAA飴、塩飴、メイタンのタブレット

  • えいようかん(非スポーツタイプ)

 代替いつもあたしゃ補給食持ちすぎなんだよ。コンビニで豪遊できないじゃないの。




4) ウェア
 当日の天候次第です。とはいえ試走レポートでも「寒かった」とあるので、アウターとしてはキャノンデールのモーフィスジャケット、下には七分の防風ズボンをはきます。ズボン、いいですよ。恥ずかしくないのと腿が冷えないってのは大きいです。や、マジで。


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 その中身はといえば、股間がレジェンドなベルエキップご謹製の上下ピンクのジャージ。インナーにはスポーツデポの速乾性タンクトップをチョイス。んー、ランドヌール宮城ジャージとか欲しいですぅ。


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 それにレッグカバーとアームカバー。レッグカバーはいつもので、若干皮膚に攻撃をしますが、手持ちがこれしかないのでしょうがない。アームカバーは裏起毛のもので、カバーというよりウォーマーにちかいですね。暑そうならカペルミュールのアームカバーにします。
 このイオンサイクルでしか買えない怪しげなPERBICHI(ペルビチ)というメーカーのものは、私には結構合います。


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5)ヘッド回り(ライト、サイコン、ベル)



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 みんな大好き中華ライト。実験を繰り返した結果、この子は最低の200ルーメンで死ぬほどバッテリーが持つことは実証済み。ただまあ、不安があるので日本製のGENTOSももちろん持っていきますよ。サイコンはいつも通り、CATEYE…なんだけど、中華ライト光らせるとたまに干渉してダメになるのよね。まあ、そん時は etrex30 で代替できるので無問題。
 etrex30 は最新のファームウェアにアップデートしてありますが、体感できるほどの違いはないなあ…。


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 ベルは今までコラムスペーサーと一心同体のものを使ってましたが、安全性に問題がありそうな気がしたのでCATEYEのベルに変更。三瀧山不動院のカエルお守りで無事帰りたいところです。これは鈴になっていて、熊対策としても優秀です。
 ステムはなんと 130mm 。これが自分のジャストサイズな気がします。おじぎ乗りっぽい体重移動ができるようになりました。


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 そしてバックミラー…は嫁認識用なのですが、もちろん車の確認やランドヌールの視認にも役に立ちますのでつけっぱなし。




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 山刀伐峠を超えるってんだからライトはバッチリ用意せにゃ、ということでハブライト。足元が明るいってのはいいですよやっぱり。んだってさあ「高山森々として、一鳥声きかず、木の下闇、茂りあひて、夜行くがごとし」ですよ?しかも深夜にアタックですからねえ…。


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 輪行で逃げられるポイントなんか東北ブルベにあるもんか…とは思いつつも、タクシーで逃げかえることだってあるかもしれません。輪行袋とケータイポンプ。安心のShimano製。


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 今回初投入。AKSLEN の TL-80 という尾灯。今までサドルバッグに隠れて見え憎かったので新規に購入。結構なガタガタ道でもズレることがないし、ランタイムはかなりのモノらしいので安心安心。


 はい、と言ったような装備で今回から戦っていきたいと思います。おそらく 400 でも 600 でもほぼ同様の装備となるはずです。私の基本装備と言ったところですね。他のランドヌールに比べれば荷物を持ちすぎなくらいかもしれませんが、ビビりな私はこれでいいんです。

 さて、スタートまであと3日くらい。結構いやらしいコースである BRM517 宮城 300 最上川を無事完走できるのでしょうか。乞う、ご期待。