2009年2月3日火曜日

飯坂温泉郷へ

 ※ 旅行記を中心とした記事になります。料理関連情報は薄いですよー。※

 漬物樽の中の人の恒例行事として、1月は温泉宿に泊まりにいくことになっています。昨年の12月から今年の1月と仕事も私事も大忙しでゆったり休む暇もなかった私と相方さん。サチコさんの記事にアテられてしまったこともあり、今回は疲労回復がメインテーマです。刺激の強い泉質(硫黄泉とかね)も大好きなのですが、アルカリ単純泉の柔らかなお湯も恋しい。というわけで、我々が選んだのは福島県は飯坂温泉の喜久屋旅館さん。

※ 以下、写真・文章が多めに入りますので、ご興味のある方だけ「続きを読む」をクリックしてください。)

 キンとした寒さは中の人を布団から放してくれません。もぞもぞとエアコンのリモコンを探して「あたたまるまで もう ちょっと だけ ねます」とか言いながらうだうだ。…30分後「ふぁ、寝坊したぁあぁぁ!?」と飛び起きるハメになるわけです。眠い目をこすりこすり、チョコケーキ作り。相方さんが好きなんですよ、チョコケーキとかチョコレート色とか。

 このレシピの「サラダ油」を「バターとオリーブオイル」に変更し、「牛乳小さじ1」を追加。チンする時間は従来の半分にして、あつあつのタッパーを布でくるんで蒸らしてみました。ものすごくしっとり。これは改心の出来、と思ってひっくり返してみると、中がスカスカになっている箇所が散見されました。うーん、タッパーをトントンたたいて空気を抜いたつもりだったのだけど、足りなかったのかなぁ…。爆発しているところが目立たないように四角く切ります。切れ端はおいしくいただきました。ウマー。
 お昼はお弁当の予定なので、漬物各種をタッパーにつめて行きます。赤カブの甘酢漬け、ごぼう漬け、青菜漬けに白菜松前をそれぞれ大目に入れていきます。これで料理関連は終わりっ。朝ごはんはケチャップライスをちゃちゃっと作ってもぐもぐ。んむ、なかなかの出来。
 そうこうしているうちに約束の時間が迫ってきました。超特急でお風呂に入り、大慌てで荷造り開始。時計と睨めっこしながらアグスティン・バリオス全曲集、内田百閒著『御馳走帖』、読みかけの山本周五郎『ならぬ堪忍』を放り込む。準備完了、行ってきまーす!
 と、外に出ようとするとなんか変な物音が。たかたかたかたか。…なに?と思って玄関を開けると
ゆきまみれ。
 激しい勢いでみぞれ雪が。がー、時間ないのにっと雪を下ろす作業をはじめたものの、水分の多い雪がみっしりと詰まっているためなかなかはかどりません。泣きながら作業を終えて出発。
雪
相方 「よりによって大雪とはねぇ」
漬物 「"雪の露天風呂"が楽しめる、と逆に考えるんだ!(`・ω・´)」
相方 「さすがチーム前向き6%。」
雪山
漬物 「…」
相方 「悪天候のため露天風呂には入れません、とかなったりしてね(´・ω・`)」
漬物 「大丈夫だと思う(´;ω;`)ス」
雪道
 雪、雪、雪。風で道路からも雪が吹き上げます。それを見ていた相方さん。ポツリと「雪はぁ下からぁ空にぃい降るぅう」と歌いだしたので、気分はすっかり吉幾三。すちゃっとCDをとり出し、雪國、女のかぞえ唄、男の舟歌等々を熱唱しながら車を走らせているとあっという間にお腹が空くわけです。
お弁当
 中の人が詰めてきた漬物たちと、相方さんの作ってきた卵焼きとハムの焼いたものをおかずにおにぎりを食べます。ごみごみしたところであくせくと食べるよりも、まったりと馬鹿話なんぞしながらのんびりお弁当というのが我々は好みだったりします。胃腸にも優しいですしね。
 ご当地の「うまいもん」を食べるのももちろん良いのですが、福島県は隣県ということもあって、あまり「ご当地の~」という感覚がないというのも理由の一つです。
 おなかを満たしたら、福島市は福島県観光物産館へ行き、お土産と今晩飲むお酒の確保をします。
観光物産館
 相方さんは"ほまれ酒蔵"の「造り酒屋のゆず酒」を、中の人は"金水晶酒蔵"の「金水晶初しぼり」を抱えてレジに走ります。
ゆず酒初しぼり
 一路飯坂温泉へ。飯坂温泉へは車でも電車でも30分ほどで着くので、気軽に行けるところではあるのですが…現在はあまり栄えてはいません。ヤマトタケルの時代から温泉として利用されており、かの松尾芭蕉や与謝野晶子も立ち寄ったほど由緒は正しいのですが…。少し前までは歓楽街としてだいぶ栄えていたようす。福島市で用事を済ませた大勢の旦那衆が飯坂で遊んでいたんだそうですよ。
恋の陸奥 人目を信夫(※1)
首尾も飯坂 湯のけむり サテ
寄らんしょ 来らんしょ 廻らんしょ
ササッカ サッカ サッカ 飯坂へ

※1
"しのぶ"と読み、地名です。源 融が詠んだ「みちのくの しのぶもちずり たれゆえに~」の「陸奥の信夫文知摺」が有名ですね。
 という小唄が流行るくらいに歓楽街としては華やかだったようですが、バブルの崩壊に加えて「飯坂温泉=不倫」といったようなイメージがテレビドラマ?でついてしまい、あっというまに閑散としてしまったようです。営業を停止したものの、取り壊すことも出来なくて廃墟となってしまった旅館やホテルがぱらぱらと見えますが、それすらも、温泉街としての鄙びた風情に拍車をかけるスパイスになっています。良い雰囲気ですよ。
 飯坂温泉駅まえはこんな感じ。松尾芭蕉の石像と、温泉卵を象徴するようなオブジェが置かれてます。温泉を利用して湯気を出しているそうですよ。
飯坂温泉駅
 早速温泉卵(福島では「ラジウム卵」と呼称されています)をゲットしに参りましょう。今晩はこれをちゅるんとやりながら日本酒ですよ。くぅー!
ラジウム卵
お邪魔したのは岩城屋米穀店さん。店番をしていたおばちゃんと「あいにくの雨でねー」などとちょっとお話。ふーん、日本で始めてラジウムが検出されたのが飯坂温泉で、それ以来、飯坂温泉の温泉卵はラヂウム(ラジウム)卵というようになったんですって。
 チェックインまでにはまだまだ時間があるので、ひとっぷろ浴びることに。飯坂温泉といえば鯖湖湯。日本最古の木造建築共同浴場だったのですが、老朽化が激しくまったく同じ風情に改築されたものが現在の鯖湖湯です。公衆の浴場になっており、200円という格安価格で入れることも魅力の一つ。昔ながらの御影石の浴槽と天井の高い木造建築の雰囲気はなにものにも変えることは出来ません。
鯖湖湯
 鯖湖湯の隣には巨大なくみあげポンプと足湯があります。
ぽんぷ
 お湯はじんわり、ゆっくりと身体をぽかぽかにしてくれました。とはいえ、この天候の中で素足を出すのは軽く自殺行為。足湯をあきらめて、宿へ移動します。途中の甘味どころを覗くとみんな大好き「ゆべし」が並んでいます。これ二つくださーいとお店に入ると、"萩の月と地元甘味との確執"や"ゆべしの本来の作り方"云々というお話を店のおばあちゃんから15分にわたってレクチャーされる。おばあちゃん、暇だったんだね…?
 喜久屋旅館さんへわらじを脱ぎます。どっしりした和風の風情が感じられる堂々としたたたずまい。廊下に置かれているオブジェもなかなか心憎い演出です。
部屋のドアの前踊り場
 10畳+4畳+テラス(6畳)を二人占め。飯坂のもうひとつの名物巻きせんべいももちろんついてきます。各々本を読んだりしながらお茶を飲むハイパー漬物タイム開始です。
お部屋巻きせんべいお茶請け(つけもの)
 お湯に入ってしっとりしたり、本を読んでほっこりしたり、漬物食べてぽりぽりしたりしているうちに夕食の時間に。
夕食夕食
 夕食は取り立ててウマー!と言うものもないし、珍しいものもありません。その代わりに、一つ一つが丁寧に作られているようでした。暖かいものは暖かいものなりに、冷えていいものは冷えてもおいしくといったような、言われなければわからないような工夫がいろいろとしてあるとのこと。量もいい塩梅。ゆず酒と初しぼりをさしつさされつしながらほろ酔い加減でまったり。
 酔いもさめた頃、露天風呂へ突撃です。外は大雪…まさに雪の露天風呂ってヤツですよ。
YukiYuki2
 外気温は2度。お湯は40度前後。泉質は単純アルカリ泉で疲労回復と胃腸疾患に霊験あらたか。湯船に入っている分には寒さも感じませんし、そのうちからだの芯からぽかぽかと温まって寒さを忘れます。
 お風呂も入ってポッカポカ。居酒屋にでも繰り出して…といいたいところですが、外はしゃれにならないくらいの雪。お部屋でだらだらと、買ってきたお酒を飲むことにします。漬物、ラジウム卵、燻製卵と今日はカロリーがない日なので久々にポテトチップスも参戦。本を読みながらしずしずと宴会は進行していきます。
宴会
漬物 「これ、いい話なんだわ」
相方 「"米の武士道"?山本周五郎かぁ。どれどれ。」
・・・・・・
相方 「落ちが読めた」
漬物 「たぶん正解。ベタだけど、じんとくるのよ。」
相方 「読みやすくてストンとくるよね。あ、だったらコレとかどう?」
漬物 「童門冬二の"名将に学ぶ人間学"?ふむふむ、面白そう…」
宴会
 だらだらとお酒を飲みつつ、ゆっくり本を読んだりちょいちょい会話しながら過ごす数時間は本当にゆっくりと、だけど確実に過ぎていきます。お酒がいい感じに回った頃はもう24時近く。明日も温泉はいるぞー!と怪気炎をあげながら就寝する二人なのでした。
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 朝風呂に入るんだっ!とアラームを06:00、06:30にセット。ぴぴるぴるぴると鳴っているのを華麗にスルーして惰眠を貪っていると、ずどんと突き上げるような揺れを感じました。地震のときにオタオタしないのが訓練された宮城県人。寒いけれど窓も扉も全開にして避難経路を確保します。相方さんがすかさずコートを持ってきてくれたところで揺れが一段落。震度4とかおっかなス。他のお客さんにも特に混乱がなかったようなのが幸いでした。さすがに目が覚めたのでお風呂を浴びに行きます。
内風呂
露天
 昨晩からお肌はしっとり。乾燥肌でかゆかったところもぜんぜんかゆくありません。結構お酒も飲んだのに少しもアルコールは残っていないようだし、心なしか身体まで軽やか。さすが源泉掛け流し。名残を惜しむようにゆーっくり浸かります。
 はーらへった!はーらへった!朝食のお時間ですよ!
お品書き
 朝食も夕食と同じく「素朴なものに工夫を凝らして品数多く」というコンセプトなのかもしれませんね。
朝食
 麦の煮物が絶品!よーく冷えてて塩味で。お酒を飲んだ次の日に食べたいようなあっさりした冷たさにのども胃も喜んでいます。いかにんじんのにんじんがぱりぱりしてること!ゆず味噌の香りは食欲を増進しますし、まいたけの香りも溜まりません。とはいえ、福島の温泉宿の真骨頂といえばやはりコレ。
納豆おん卵
 ハァ━━━━━━(*´Д`)━━━━━━ン!
 納豆嫌いの人には地獄絵図かもしれませんが、納豆大好きっ子ならわかってもらえるだろうか、この黄金コンビのかもし出すハーモニー。半分解けている白身としっかりした黄身が納豆に加わって、えもいわれぬ食感と味を生んでくれるんです。味的には納豆卵ですが、この食感はこの組み合わせでしか出ません。思わずご飯を2杯も食べてしまいました。ご馳走様でした。
 ゆっくりとした時間はあっという間に過ぎ行き…。日常に戻るときがやってきました。お世話になった喜久屋旅館さんの前でパチリ。
 喜久屋旅館
 鄙びた温泉街というのは、風情があります。都会の喧騒を離れて…というほど私の住んでいるところは都会ではありませんが、それでも非日常で特別な感じを提供してくれるように感じました。季節も季節ということもありますし、もともとあまり栄えていないがゆえに人も少なく、まるで貸切?と思うようなシーンもいくつかありました。気兼ねなくのーんびりしながら、その土地のおいしいものをいただいたり、おばちゃんたちと他愛もない雑談をしたり、いいお湯にゆっくりと浸かったりしながら過ごす日々というのは、たとえ一泊といえども心から癒されます。
 福島にお寄りの際は是非飯坂温泉へ。お湯の良いこと請け合いです。ちょっとした穴場ですよ。

5 件のコメント:

  1. いいですなぁ(^o^)~♪
    相方さんとふたりでゆっくりとした時間を過ごしてこられて、記事を読んでるこちらまで、ほっこりしましたよ(´▽`)
    それにしても、漬物持参とはw
    なんともうらやましいかぎりです
    温泉行きたいなぁ
    できれば、誰かとふたりっきりで♪
    あ、納豆温泉たまご、犯罪行為ですよw
    テロ画像すぐるwww

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  2. し、渋い旅だ。
    地震、大した事なくて良かったです。
    それにしても訓練された兵士のような行動。近年地震が多い新潟県民だと、「このくらいの揺れなら…と侮ってしまいます。(;´д`)トホホ…

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  3. 話題が違って申し訳ないが、
    漬物とメキシコに目のない漬物さんに
    http://type2life.blog59.fc2.com/blog-entry-104.html
    メキシコ仲間さんになるんではないかと…

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  4. なんか、色んな意味で
    激しく羨ましいわけですがw
    まったり本を読みつつ温泉
    しかも漬物付とか!!!!!
    (つД`)

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  5. > ぽんさん
     ですよねですよね!温泉卵納豆は存在自体だけでもテロリズムなのです。
     漬物や保存食は、こういうときに気軽に携行できるのが強みと言えば強みかもですね。臭いさえ何とかすれば、ですけど(苦笑)
     ブログのご紹介、ありがとうございました。カンクンとか懐かしすぎ…。ビバめーひこー。
    > タロウさん
     宮城県では「宮城県沖地震がここ10年でまた必ずやってくる!」という風潮があるので、地震時の対応はエキスパートかもしれません。新潟の地震頻度も高いようですし、お互い気をつけながら生活しましょーう。
    > (´ω`)さん
     おかげさまでゆーっくりできました。これでばっちりストレス解消!とか思っていたのですが、月曜日の会社と言うのは…(泣)

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